あなたに大切な香りの記憶はありますか?

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石田衣良,角田光代,朱川湊人,阿川佐和子,
熊谷達也,小池真理子,重松清,髙樹のぶ子
/
文藝春秋



香りと記憶って
深く結びついてるっていうよね。

それは、
香りを感じる脳の場所と
記憶をつかさどる脳の場所が
近いから、

だったと思う(多分)


8人の作家さんによる、短編集。
それぞれ作品のカラーが違っていて、
でも不思議と「香りと記憶」という共通のテーマがあるせいか、空気感が似ているような気がした。


*夢の香り・石田衣良
*父とガムと彼女と・角田光代
*いちば童子・朱川湊人
*アンタさん・阿川佐和子
*ロックとブルースに還る夜・熊谷達也
*スワン・レイク・小池真理子
*コーヒーもう一杯・重松清
*何も起きなかった・髙樹のぶ子


どの物語も面白かった。

小説ってみんなそういうものだけど
「記憶」にまつわる物語だと、余計に
なんだか人の人生を覗き見しているような感覚になるような気がする。

匂いフェチとしては
やっぱり、香りと記憶は密接に関係していると思う、今日このごろ。

だれかのことを強く思ってみたかった

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『だれかのことを強く思ってみたかった』

角田 光代, 佐内 正史
/集英社




作家・角田光代と
写真家・佐内正史が

共に東京の街を歩きまわり
紡いだ物語。

角田さんが描く物語と
佐内さんが撮った写真が
交互に見れる、短編集。

ほとんどの話が数ページという短さなのに
そこにはしっかりと
東京という街の中での人間の断片があって

その切り取り方が、さすがだなぁと思う。


東京の道端に
ぽつんと、少し汚れたこの本が落ちていて
拾う場所、拾う人によって
違う物語が読めるような、そんなイメージの一冊。

東京公園

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『東京公園』

小路 幸也
/新潮社





圭司。大学生。
公園で家族写真を撮っている。
大学で知り合ったヒロと2人暮らし。
ヒロが借りている一軒家の玄関には
なぜか<たばこ>という赤い看板。

カメラを構えて
ファインダーをのぞく。

人間はファインダー越しに嘘はつけない。
切り取られたその一瞬には
その人の本当の姿が見える。



圭司の視点、圭司の語りで進められる物語。

圭司が、まわりの人間と関わり、
見ること、感じること一つ一つが
細かく、丁寧に描かれている。

作られた小説というよりも、
本当に圭司という人が、実際にあったことを書いているような感じ。
特徴的なのが“「~したんだ。」「~だったんだ。」”という書き方。

穏やかに読めて、結末が気になる、
とても好きな小説のひとつになった!
この作家さんの他の小説も読んでみたい。



以下、
作中の心に残った言葉。


・人間はファインダー越しに嘘はつけない。
・「なんで、人間は誰かと一緒になることをいつも考えているんだろうなって」
・「そこには幸せの匂いがあるって本能なんだよきっと。人間が生きていく上でのさ。いちばん根っこにある本能」

ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶

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『ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶』

大崎 善生
/ 新潮社





『キャトルセプタンブル』
『容認できない海に、やがて君は沈む』
『ドイツイエロー』
『いつか、マヨール広場で』

の4編からなる、短編集。


どの物語でも共通しているように思うのが
“別れ”
というものかな。
あと“不器用さ”。

この作家さんは、比喩が巧みで
様々な言葉の表現をしながら、
世界観を作っているように思う。

題名にも色があるけど、
今回の短編集には様々なところで
“色”を感じることが多かった気がする。


人間の感情の
“うまく表現できない”所を
感覚的に文章にされている気がして
だからそれぞれの物語を上手く説明できないのだけど。

時間が経っているのか、いないのか
何か出来事があったのか、なかったのか
どこか曖昧な物語たち。

でもやっぱりこの作家さんの書く物語は好き。
なんか、空気感が好き。

この感覚に共感できるあたり、
やっぱり自分は不器用なんだろうなー。


どの物語もすきだけど、
特に『容認できない海に、やがて君は沈む』
『ドイツイエロー』が良かった!


オーデュボンの祈り

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『オーデュボンの祈り』

伊坂 幸太郎
/ 新潮社




H12年に出版された
伊坂幸太郎デビュー作!

とても素敵な作品でした~!!

最近の伊坂作品に比べて
伏線回収がかなり後半からだったので
ずーっと
不思議な気持ちで読み進んでいました。

主人公と一緒に
あっちこっちウロウロして、
色んな人と出会って、
色々な事を想像して。

そしたら
最後の最後に
ものすごく素敵なラストが待ってた・・・。

あの、あの場面の続きが見たいよ!!!

あえてのラスト。
あの切り方でさらに味わい深くなっているのかもしれないなぁ。

それにしても
デビュー作からあの伏線大回収・・・ひぇー。

事実に基づく内容もあるし
どれもしっかり裏付けされた理由や状況が書かれているのに
どこかファンタジックな伊坂ワールド。
不思議だぁ。

そして
“神様のレシピ”
の大元はここだったんだね!!
その事にも感動した!ここかぁ!と。

あらためて、
作品同士が繋がってゆく素敵さを感じたなぁ。
未読の作品を読んで行くのが益々楽しみになったぞ!



オーデュボンの祈り (新潮文庫)
新潮社
伊坂 幸太郎

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伊坂 幸太郎

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ゴールデンスランバー

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『ゴールデンスランバー』

伊坂 幸太郎
/新潮社




日本で起きた、首相暗殺事件。
その事件の表と裏を丁寧に描いた作品。

著者があとがきで触れているように
この作品は“ジョン・F・ケネディ暗殺事件”と
重ね合わせて描かれた、架空のお話。

恐ろしい。

本当に信じられるものは、
自分が今、手に触れられるもの。
すぐ近くで感じることの出来る、生身の温度。
それだけなんじゃないかと思う。

相変わらずの伊坂さんの作風は変わりなく、
様々な視点から、時間軸入り混じり、
読み手に少しずつ事の全貌を見せてく手法には、
ついつい引き込まれてしまう。

しかし今回のこの作品は
“物語”というよりも、
現実的に色々と考えさせられる作品だった。
読むのが楽しくもあり、怖かった。

ノンフィクション作品が好きな方も楽しめると思う!


『Golden Slumber』
とは、ビートルズのアルバム『ABBEY ROAD』に収録されている楽曲タイトルで、
ポール・マッカートニーが、
ばらばらになったメンバーをもう一度ひとつにしたいという
願いを込めながら別々に収録された8曲をつなげ、
壮大なメドレーに仕上げた、その中の1曲。

作中に何度もビートルズの楽曲として『Golden Slumber』は登場する。


最後のささやかな希望の持たせ方が、
伊坂さんらしくて、いいな。厭味じゃないんだよね。

青柳のお父さんには泣けた。
三浦がとても魅力的な人物に思えてしまうのは私だけじゃないはず。
森田さん、樋口晴子、カズ、轟さん、保土ヶ谷のおっちゃん、、、
読み終わると、登場人物が次々浮ぶよ~

粋な人物が多すぎる!かっけーよみんな!


これ映像化しないのかなぁ。
相当おもしろいと思うのだけど。

アーモンド入りチョコレートのワルツ

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『アーモンド入りチョコレートのワルツ』

森 絵都
/角川書店




森絵都さんの短編集。
すべてのものがたりの題名がクラシック音楽の曲名になっていて、
登場人物は皆、中学生。

やわらかく、やさしい文章で
誰もが通り過ぎたことがあるような、知っているような
ずっとは続かない、ある「一瞬」に感じることを描いているような気がする。

きっと中学生が読んでも、読める内容だけど
私は、大人になってから出会えてよかったなぁと思える一冊。


*子供は眠る
毎年繰り返される、ぼくたちの特別な夏。
心が成長することにより生まれる葛藤。
それを遥かに上回る、自分の想像出来なかった事実を知った時の
気持ち。
もう取り戻せないもの。

*彼女のアリア
一番好きなお話。
眠れない少年が、旧校舎で同じ悩みをもつ少女と出会う。
卒業式のあの感覚。ぞわぞわする。
最後の2人のやりとりが好き。

*アーモンド入りチョコレートのワルツ
ちょっと不思議な感じ。
一時の特別感。でも日々日常は変化していく。
永遠に、同じように続くものなんてない。


何年か前に一度借りて読みかけていたのだけど、
途中までしか読めず、
もう一度ちゃんと最後まで読みたくて再チャレンジ。
読めてよかった!